身体を動かしづらい、
ふるえる病気
これまでは問題なく生活動作が出来ていたのに、最近になって身体を動かす時にふるえてしまう、または上手くできないなどの症状が出現した場合にはパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患や本態性振戦、脳梗塞などが疑われます。
パーキンソン病とは
脳の中のドパミンという物質が不足して起こる病気で、振戦(ふるえ)や動作緩慢、筋強剛(筋固縮)、姿勢保持障害を中心に運動障害を起こす病気です。50歳以上で起こることが多く、高齢者ではさらに多くなる病気です。頻度としては人口10万人あたり100人~180人くらいとされており、人口の高齢化に伴い患者さんは増加しています。神経細胞の中に α-シヌクレインというタンパク質が溜まることがパーキンソン病を発症する原因となっていますが、なぜこれが神経細胞の中に溜まってしまうのかは不明で、食事や職業、住んでいる地域など、特別な理由はまだ分っていません。
中脳の黒質ドパミン神経細胞が減少することで、体が動きにくくなり、ふるえが起こりやすくなるために、これを補充する治療を行うことで症状の改善を図ります。
主な症状
- 振戦(手足のふるえ)
- 動作緩慢(動きが悪い、動作が遅い)
- 筋固縮(身体が硬くなる)
- 仮面様顔貌(仮面をつけてるかのように表情がなくなる)
- 姿勢反射障害(身体のバランスが取れない、転びやすい)
診断は特徴的な症状(神経学的所見)を細かく診察することが必要です。他の病気が原因となっていないかを頭部MRI検査を行い特徴的な異常の有無を検査します。他の病気との見分けがつかない場合には、特別な検査が必要になることもあります。
身体が動かなくなる病気
片側の上下肢(手足)が動かなくなることを片麻痺といいます。この原因としては脳の運動神経が障害されることです。脳から手足をつかさどる運動神経は延髄で交叉するために右側の脳が障害されると左半身が、左側の脳がやられると右半身が麻痺します。
脊髄で運動神経が障害されると両側が麻痺する対麻痺を生じ、障害を受ける脊髄の高さで麻痺がおこる範囲が変わります。例えば、背中のあたりで脊髄が障害されると両側の下肢に麻痺が生じます。また、頚髄で障害されると四肢すべてが麻痺する四肢麻痺になることもあります。
脊髄が障害を受ける原因としては、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害が多く、脳腫瘍、外傷などによっても起こります。診断には症状に応じたMRI検査が有効です。
身体が勝手に動く病気
身体が自分の意志とは関係なく勝手に動いてしまうことを不随意運動といいます。この原因となる病気には、けいれんや振戦、舞踏病様運動、バリスム、アテトーゼ、ジストニア、ジスキネジア、ミオクローヌスなどがあります。その他にも、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)やレム睡眠行動障害という病気もあります。
てんかん
けいれん発作を繰り返す脳の病気で、年齢、性別、人種の関係なく発症します。
世界保健機関(WHO)によると「脳の慢性疾患」とされており、脳の神経細胞に異常な興奮が突然発生することで脳の神経ネットワークに乱れが生じてしまい、この激しい興奮によりけいれん発作を繰り返す病気です。
生涯を通じて1回でも発作を経験する人は人口の約10%、2回以上は約4%、そのうち「てんかん」と診断される人は約1%で、日本では約100万人のてんかん患者がいるとされています。
てんかん発作は、大脳の神経の中でどの部分の神経細胞に異常な興奮が起こっているかで生じる症状が決まりますが、けいれん発作にはいくつかのパターンがあることからどのような発作が繰り返し起こるのかで診断します。また、脳波により脳内の神経の活動を測ることでけいれん発作を起こしやすい異常な波があるかどうかを見ることもてんかんの診断に有用です。
てんかんを生じる年齢層は幅広くて乳幼児期から老年期までみられます。頻度としては人口100人のうち0.5~1人(0.5~1%)で発症するとされており、発病する年齢は3歳以下が最も多くて成人になると減ってくるのですが、60歳を超えた高齢者になるとまた増えてきます。この理由としては、高齢になり脳梗塞といった脳血管障害が原因になってけいれん発作を発病するといわれます。小児期に発症したてんかんの患者さんの一部は成人になる前に治ることもありますが、ほとんどは治療を継続することが多いです。多くの場合では内服薬によりてんかん発作を抑える治療を行いますが、一部のてんかん患者では内服薬での管理でも十分は発作抑制ができないことがあり、場合によっては手術により原因となっている神経細胞を取り除いたり、発作を抑える器械を埋め込んだりもしています。
むずむず脚症候群
むずむず脚症候群とはレストレスレッグス症候群ともいわれる病気で、主に下肢に不快な感覚が起こります。特に夜眠ろうと布団に入ったときや、移動中の車内や映画館などでじっと座っているときにふくらはぎの奥に虫がはっているような感じがする、またはピリピリや痒くなるといった不快感を生じるので無意識に脚を動かしてしまうもので動かしているとこれらの異常感覚は和らぐという特徴があります。
日本では人口の200万~400万人がこの病気を持っているとされており、このうち治療が必要なのは70万人ほどと考えられています。性別では女性が男性の1.5倍多いといわれ、また年齢が上がるにつれて有病率が高くなるという報告もあります。原因はまだ明確ではありませんが、神経伝達物質のひとつであるドパミンの機能障害が関与していると考えられています。
レム睡眠行動障害
睡眠中に夢で見ているものと同じ行動をとってしまう病気です。その内容によっては大声をだして叫んだり、起き上がってしまったりする行動異常です。症状がひどい場合では、歩き回ったり、窓から飛び出してしまったりと危険を伴うこともあります。
原因は明らかでないのですが約半数例には中枢神経の疾患がみられ、パーキンソン病やレビー小体型認知症の前ぶれとも言われています。