頭痛外来とは
頭痛は疲労や睡眠不足、風邪をひいたとき、目の疲れでも起こる日常的な症状です。さらに、片頭痛などの慢性的な頭痛で日常的に悩んでいる人も少なくありません。ほとんどの頭痛は命に関わることがありません。
しかし、日常生活の妨げになっていることが多くて楽しめない日々を過ごすことになってしまいます。さらには一部の頭痛は脳卒中などの症状として現れている場合やそのリスクが高まったサインとして現れている場合があるために注意が必要です。
例えば、今までに経験したことがないほど激しい頭痛が起きている場合や頭痛の訴えの後に意識を失ってしまうような場合は早急に診察を受けましょう。脳卒中が原因である頭痛の場合は早く適切な治療を受けないと命にかかわることもありますし、たとえ命が助かっても深刻な後遺症がでてしまうこともあります。
あまり強い頭痛ではないまたは神経症状がない場合には、その頭痛が危険なものかどうかを調べるためには脳神経外科の受診が有効です。頭部MRI検査により脳卒中の原因となる脳血管の異常などの精査を行うことで、危険性が判断できます。
さらに、脳神経外科受診だけでは的確なアドバイスを得られにくい一次性頭痛に対しては、頭痛専門医の受診を勧めます。その理由としては、これまで悩まされてきた頭痛がどの様な種類であり、どんな治療が必要であるかのアドバイスが得られるためです。
これらのような気になる症状がありましたら、気軽にご相談ください。
よくある慢性的な
頭痛(一次性頭痛)
脳卒中などの原因ではないとしても普段から頭痛に悩まされている人は多くて日常生活にとても影響しているとも言われています。
しかし、この中の多くの人は病院にかかることなく市販薬を中心とした治療をしていて、頭痛がひどいような場合でも受診をすることなく我慢をするか自宅にて休んで過ごしているとされています。
頭痛は眼に見えない病気であることから他の人にはわかりづらく、特に学校や職場においては周囲の理解が得られていない場合には「たかが頭痛」という空気があり、休みづらいことも多いと思います。命にかかわるような頭痛ではないかもしれませんが、日常生活には大きな支障となり、仕事だけではなく休みの日の外出や旅行にも影響してくる重大な病気です。
よくある一次性頭痛のなかでも特に頻度の多い片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、薬物乱用頭痛について紹介いたします。その他の一次性頭痛についても頭痛外来にて対処しております。一次性頭痛は日常生活に大きな支障を及ぼすため、専門医による適切な治療を受けることをおすすめします。
片頭痛(偏頭痛)
女性に多く、
休まなければならない頭痛
典型的な片頭痛としては頭のどちら側かが脈打つようにズキンズキンと痛くなるものです。
これに加えて中等度から重度の頭痛であり、動作により悪化するといった特徴を持っていて、痛みの持続時間は4~72時間というものが片頭痛の診断基準になっています。さらには頭痛が起こる前に前兆があるかないか、めまい感を伴うのか、片麻痺が一緒に出ているのかなどの特徴により病名を区別していきます。
普段起こる頭痛がこのような特徴に当てはまるのかを考えてみてください。もしも片頭痛の可能性が高い場合には片頭痛用の薬が有効である可能性があります。また、子供の片頭痛では両側性であることが多いとも言われています。
緊張型頭痛
日本人で最も多いとされる頭痛
頭痛の特徴としては、前頭部が締め付けられるような痛みだったり、頭がすっきりしない、重たい感じといった鈍痛を起こします。
緊張型頭痛は頭痛を訴える方の中約6割を占めており頻度としては一番多く、また生涯有病率は30~78%と言われており多くの人が経験する頭痛です。その原因としては肩こりや首のこりからくるといわれ、身体の緊張・ストレスやスマートフォンの長時間使用、パソコン作業、運転は同じ姿勢を保つことで頸部や肩の筋肉が強く緊張するため、緊張型頭痛を起こしやすいとされています。しかし、なぜ痛みが起こるのかという原因は解明されていません。
緊張型頭痛の診断基準として、頭痛は両側性で圧迫感や締め付け感(非拍動性)が中心であり、軽度から中等度の頭痛で運動により悪化しないことが特徴です。痛みが起こると持続時間は30分から7日間とされています。さらに、頭痛の起こる頻度によって「稀発反復性」「頻発反復性」「慢性」と区別します。稀発反復性は月に1日あるかどうか(年間で12日未満)の場合です。頻発反復性は、3ヵ月に渡って月に1~14日(年間12日以上~180日未満)で頭痛がある場合です。これよりも多い頭痛の場合は慢性緊張型頭痛です。この中のどれであるかで治療の方針が決まりますが、慢性の場合は片頭痛の時と同様で中枢性感作という状態になっており、これに対する治療が必要で長期戦になります。痛みがあるときには一般的な痛み止めや頭痛薬が有効で、頭痛体操やマッサージなども効果がある場合が多いです。
群発頭痛
男性に多い傾向がある頭痛
群発頭痛とはある日突然、目の周りに強い痛みが走り、毎日のように続く痛みです。
痛みが続く時間は15分〜180分と幅がありますが、痛み出すと連続的に痛みが出てきます。多くの場合は毎日同じ時間帯に痛みが出るのですが、ある程度の期間が過ぎると治まってきます。ただし、毎年同じ時期に繰り返すことも多く、痛みが起きる時期になると薬を準備して備える人が多いです。
群発頭痛は三叉神経自律神経性頭痛(TACs:trigeminal autonomic cephalalgias)という分類になるのですが、この頭痛は片側の酷い頭痛発作に加えて同じ側に自律神経の症状を伴う一次性頭痛のことをいいます。まだ、原因はわかっていません。
三叉神経自律神経性頭痛には群発頭痛のほかに発作性片側頭痛(片頭痛とは違います)や短時間持続性片側神経痛用頭痛発作(SUNCT/SUNA)、持続性片側頭痛があります。これらの病気は痛みの出る場所と自律神経症状についてはほぼ同様なのですが、痛みの酷さや痛みが続く時間、日数などの違いがあります。
痛みの生じる部分は、特に三叉神経第一枝の領域に多く発生するので前頭部や眼窩部に痛みが出ます。自律神経の症状というのは目が潤んで涙が出てきたり、結膜が充血したり、鼻水が出てきたり、鼻が詰まったりするなどの症状で痛みが出ている時に痛むのと同じ側にこれらの症状が一緒に出ます。
群発頭痛はどちらかというと男性に多くて痛くなる部分は三叉神経痛と似ているのですが、三叉神経痛と大きく違う点としては不応期というものが群発頭痛には見られないことです。この不応期というのは三叉神経痛の時にはあるのですが、痛くなったすぐ後に痛みが発生しない時間がしばらくあることを言います。群発頭痛にはこの不応期がないので痛みがたて続けに起こり、痛みの発作は限られた期間に集中しており一日に0.5~8回の発作があります。また、痛みが起こっているときには先ほどの自律神経症状のほかにイライラと落ち着きがなかったり、ちょっと興奮していたりもします。
薬物乱用頭痛
頭痛薬の飲み過ぎによる頭痛
もともと日常的に頭痛で悩まされているので、頭痛が起きると頭痛薬をすぐに飲んで対処している人の中では薬の飲み過ぎになっている場合があります。
目安としては月に10日以上(薬の種類によります)頭痛薬を服用していると薬物乱用頭痛になっているかもしれません。 ここで注意が必要なのは内服回数ではなく日数で評価を行います。これは診断を行うためには頭痛が何日あったかが基準になっているからです。頭痛があって1日のうちに1回の内服でも1日ですし、3回の内服でも1日と数えます。1日1回の内服を3日間行った場合は3日と数えます。
この薬物乱用頭痛がどのくらいの頻度で発生しているのかというと、統計的には人口の1-2%とされており、性別では女性に多いです。
薬物乱用頭痛になり易い人は精神的な原因として気分障害を持っている人が典型的とされます。気分障害とはうつ病または双極性障害のことです。また、依存傾向のある人やひどい頭痛の経験がありその記憶から頭痛に対する恐怖心の強い人、頭痛が起こるのではないかとの不安感が強い人になります。さらに、喫煙習慣と運動不足でリスクは約2倍高くなるといわれており、低所得や教育歴の低さも影響するといわれています。
また別の問題としては頭痛に対する知識の少ない医者による不適切な薬物指導もリスクになります。「市販薬の内服を続けるよう指導」「緊張型頭痛患者にNSAID内服を毎日するよう指導」「片頭痛患者にトリプタン系の処方をするも内服指導をしない」「予防薬を1~2週間のみ処方される」というものが代表的です。これらに当てはまる場合には専門医の受診をお勧めいたします。
薬剤乱用頭痛になる人のほとんどは一次性頭痛があり、この頭痛が繰り返すことが原因となって痛みの侵害刺激により中枢性感作が起きてきます。この感作が起こるために痛みを感じる受容体感受性の変化が起こり、少しの痛みでも強い痛みに感じてしまう様になってきます。片頭痛や緊張型頭痛の慢性化と同じ様な変化です。ただし、この薬物乱用頭痛の場合は薬を飲み過ぎてしまうことに大きな違いがあります。
治療方法は3つの原則に基づいて進めます。
- 原因になっている薬の中止
- 痛い時の(代わりの)薬
- 頭痛の予防療法
まず、原因の薬をやめるとその離脱症状は2日~10日間続くので、この時期を乗り切る必要があります。離脱症状としては、頭痛に伴い悪心嘔吐、睡眠障害、低血圧、頻脈などが生じてきます。これらの症状が出てきた場合の対処として各々の症状を抑える薬を内服することで凌いでいきます。
頭痛に対する代わりの薬は違う系統の痛み止めを使いますが、場合によっては漢方薬を併用します。
また予防薬は精神安定剤であるアミトリプチリンを中心として片頭痛の予防で使用するものが中心になります。
最初の離脱症状が出る時期が一番大変ですがとても重要な時期になります。このような離脱療法を進めることで2~6か月で約70%の方が改善します。ただし、油断をするとまた頭痛が始まり、飲み過ぎの原因となった薬を再び飲み始めてしまう人がいるので、治療開始から一年後には3割の人で再発するといわれます。
いったん飲み過ぎをやめることができても再発してくる危険性としては、緊張型頭痛であることやオピオイドの使用による薬物乱用頭痛、うつ病などの精神疾患の治療を受けている、長期間にわたる薬物使用過多歴です。
さらには、心気症、うつ、パラノイア、恐怖、強迫性障害などの精神疾患があるということも治療がうまくいかないことと関連性があるとされているので該当する人は要注意です。
飲み過ぎに注意することは良く知っていることだと思いますが、正しい情報や指導を受けていても、いざ頭痛が始まるとこのようなメッセージを覚えていられないか、正しく理解しておらずについ鎮痛薬を飲んでしまうなどが原因だと考えられてもいます。日常の生活においては頭痛に対する薬剤の使用だけではなく、毎日の喫煙、ストレス、運動不足、肥満などに留意していただき、飲み過ぎないように注意を払い続けることが大切です。
当院では頭痛専門医が治療を行いますので、心当たりのある人はご相談ください。
片頭痛と緊張型頭痛の
両方を併発する頭痛
緊張型頭痛と片頭痛の両方の頭痛を持っている人は多いです。以前はこの二つの頭痛の特徴は相反するものであり区別していましたが、最近では片頭痛発作の一部として緊張型頭痛があるという考えもあり、同時に治療を進めることもあります。しかし、片頭痛発作の時にはそれに対する薬の内服が必要となるために今発生している頭痛がどちらの頭痛であるのかを見極めて区別して行く必要があります。はじめのうちは今の頭痛がどちらの頭痛かの区別がつきづらいと思いますが、治療を進めるうちにある程度わかるようになってきます。
人によっては緊張型頭痛が主体で多く起こり、たまにしか片頭痛にならないという場合やその逆もあることから、頭痛の起こる頻度や重症度、支障度にはそれぞれ個人差があります。そのため、状態に合わせたきめ細かい治療が必要になります。頭痛が起こっているときの特徴がその都度異なりますので、どの頭痛がどのくらいの強さで、いつ起こったかなどを記録しておくことが大切で、より適切な治療を受けられますので、頭痛ダイアリーなどを用いて記録しておきましょう。
このような場合の診断・治療
頭痛に関する問診により、今困っている頭痛の特徴や回数、発作のパターン、生活への影響などをお尋ねします。これをもとに診察を行い、頭痛のタイプを診断して治療方針を決めていきます。基本的には薬による治療を行いますが、血圧が高いなどの併存疾患や体質などに合わせて薬を処方いたします。多くの場合は、症状が安定するのに時間を要するので、しばらくの間は通院していただく必要があります。
脳の病気による
頭痛(二次性頭痛)
脳卒中や脳腫瘍といった脳の病気が原因になって起こる頭痛が二次性頭痛です。
放置していると、命に関わったり重篤な後遺症を残したりする可能性もあります。
これまで経験したことがないほど強烈な頭痛を雷鳴頭痛ともいいますが、これが起こった時は特に心配です。
雷鳴頭痛の原因としては次の6つがあげられています。
- くも膜下出血
- 未破裂脳動脈瘤
- 頭蓋内動脈解離
- 可逆性脳血管攣縮症候群
- 下垂体卒中
- 脳静脈血栓症
また、頭痛だけでなく下記のような症状がある場合も早い受診が必要です。
- 身体の左右どちらかの手足がしびれる、力が入らない
- 言葉が出ない、呂律が回らない
- 物が二重に見える
- めまい、ふらつき
- 歩けない
- 意識がない
- けいれん
また、いつもと違う頭痛を感じた場合は頭部検査を受けておくことを勧めます。
頭痛をきっかけに脳の病気が早期発見されると負担の大きい手術が必要なくなったり深刻な後遺症の危険性が低くなったりといった可能性が高まります。
当院では、MRI検査をできるだけ早期に受けていただけるよう調整いたしますので、お気軽にご相談いただきたいと思います。
脳出血
多くの場合では脳を栄養している細い動脈が突然破れてしまうことで出血します。
ほとんどの場合で突然の頭痛が起こり短時間でひどくなります。脳出血が原因となる症状は、脳のどの場所で起こったのかによって決まります。
例えば、言葉が出にくいとか半身の麻痺やしびれなどです。脳出血の程度により吐き気や嘔吐、めまいといった症状も認められますが、ひどい場合には意識を無くしたり、呼吸状態が悪くなったりもします。
脳出血を起こす原因としては高血圧が関係しています。高血圧となる原因は生活習慣病による動脈硬化といわれ、特に朝の起床時に血圧が高い人や性格的に感情が激しい、入浴、排便時のいきみなどが出血を起こすきっかけになることもあります。
くも膜下出血
脳そのものを包んでいる膜にくも膜というものがあります。この膜の内側に脳の血管が通っていますが、動脈瘤などが原因で血管が破裂するとこの部分に出血が広がってしまう病気がくも膜下出血です。
突然の激しい頭痛を起こすことが多くて、痛みに続いて吐き気や嘔吐、意識障害などが見られることが多いです。出血を繰り返す危険性が高いために命に関わる状態であり、手術などで出血に対する治療を行ってもその後に深刻な後遺症を残してしまう場合が少なくありません。
くも膜下出血の約90%は脳動脈瘤の破裂が原因で、早急に適切な処置・治療を必要とします。脳動脈瘤自体は直ぐに発生するものではないので、MRI検査により脳の血管を調べておくと早期に発見することができます。脳動脈瘤がある程度の大きさに膨らんでいると破裂の危険性が高いとされているので、そのような場合には破裂する前に適切な治療を行うことでくも膜下出血を予防することができます。
脳腫瘍
脳を構成する細胞から腫瘍が発生する場合があり、これを総称して脳腫瘍と診断します。
脳腫瘍は良性のものから悪性のものまで多岐にわたり、どのような種類のもので脳のどの部分にできているかで神経の麻痺や言葉が出てこない、バランスが悪くなるなどの症状やその後の危険性が大きく変わってきます。
脳腫瘍が原因となる頭痛は頭重感が中心で、痛み止めを飲んでもあまりよくならない頭痛が続くのが特徴の一つです。さらに腫瘍が大きくなって生じる頭痛は朝方痛みが出て嘔吐してしまうが吐くと楽になるという特徴があります。
良性の脳腫瘍はゆっくりと大きくなることから頭痛が出づらいのですが、悪性の脳腫瘍は早く大きくなるので頭痛の症状が出やすい傾向にあります。また、肺がんや乳がんなどの身体にできたがんが脳へ転移して、それがだんだんと大きくなってくると頭痛が出てきて見つかる場合もあります。さらに、頭痛以外の症状(行動がおかしいとか話がかみ合わない、手足の麻痺など)があれば脳腫瘍の可能性があるので早めに頭部の画像検査を受けるようにしましょう。
いつもと違う頭痛は
早めにご相談ください
普段からある頭痛の回数が急に増えてきた場合や今までとは違ったひどい頭痛の場合には、頭の中で別の病気(二次性頭痛)になっていることがあるので注意が必要です。この場合、鎮痛薬を飲むと頭痛が治まるものの、すぐにまた痛くなるという症状が続きます。原因として特に心配なのは脳卒中や脳腫瘍といった脳の病気です。
これらが原因になっているかどうかは病院で検査を受けてみないと分からないので早めにご相談ください。
当院はMRIによる
即日検査、結果説明が可能
当院では可能な限り当日のMRI検査を行っております。
また、状態や時間が許すようであれば当日の予約検査にも対応いたします。
ご来院の際は事前にお電話にてお問い合わせください。
初診の方の場合はMRI検査が安全に受けられるかを事前にご自分で確認していただく必要があります。MRI検査が受けられない人の例としては、心臓のペースメーカーが埋め込まれている場合やMRI検査に対応していない金属が埋め込まれている場合(脳の手術で使用する動脈瘤クリップや金属プレート、歯科治療のインプラント)などの項目に検査が受けられない場合についての説明を記載しておりますので、ご確認ください。