片頭痛はどうして起こるの?
片頭痛の原因は?
どうしてこんなにひどい頭痛が起こるのかと不安になる人も多いと思います。周りの人にわかってもらうのが難しいので自分だけが悩んでいるのではないかと孤独感を覚える人もいるでしょう。では世間にはこの病気で悩んでいる人がどれくらいいて、どうなっていくのかを今回は説明いたします。
日本における片頭痛の年間有病率は8.4%(前兆なしが5.8%、前兆ありが2.6%)で、年代・性別では30代の女性が一番多いとされています。
Sakaiら:Prevalence of migraine in Japan: a nationwide survey. Cephalalgia 1997.
日本では片頭痛により日常生活に支障があっても、頭痛で病院へ行くということがまだ一般的ではなく、市販薬で済ませようとして病院を受診しない人が多いという傾向にあります。
神経説と血管説
長年にわたる研究報告から、頭痛が発生するメカニズムとして考えられているものは神経説と血管説、セロトニン説、三叉神経血管説があります。この中でも現在は三叉神経血管説が有力です。
神経説とは脳の中で神経が片頭痛の発作を起こす活動が原因とする考え方です。片頭痛の前兆には皮質拡延性抑制(CSD)が関与しているとされます。これは後頭葉に3㎜/分の電気活動抑制状態が拡延して発生することがわかっています。そして、CSDと同様の現象であるspreading oligemiaが人でも観察されています。この現象が起こる部分がちょうど視覚野であることから前兆期で認められる閃輝暗点の発生との関連あると考えられています。
血管説とは脳の中の血管に痛みの原因があるとする考え方です。片頭痛の痛みがなぜズキンズキンと脈打つ感じなのかという病態は脳血管の収縮と拡張が起こることで発生すると考えられました。そのために収縮により前兆が生じてその後の血管の拡張により拍動性の痛みが生じるとの考えです。
セロトニン説
セロトニン説とは頭痛の発作が起こる物質がセロトニンであるという考え方です。片頭痛の発作が起こると尿中のセロトニン代謝産物が増加することが分かっていました。このことは発作により身体の中でセロトニンが増加したことの証拠です。このことから、片頭痛の発作にはセロトニンが何かしら関係があると推測されていました。更なる研究で片頭痛の発作時には血液中の血小板セロトニンが低下することとが判明し、さらにはセロトニンの補充によって片頭痛が治まることで証明されています。しかし、セロトニンそのものは副作用が強いため、そのまま治療で使うには難しいことからその関連物質(トリプタン系とジダン系)が開発されました。現在はこれらによる治療が行われています。
三叉神経血管説
三叉神経血管説とはこれまでの原因と考えられた仮説から導かれた片頭痛発作が起こる仕組みと考えられる仮説です。頭の中の血管(硬膜の血管)に三叉神経が分布しているのですが、これに神経原性炎症が起こることで片頭痛発作が生じるとすることです。ストレスなどの何らかの原因で刺激されることで三叉神経の末端部分が活性化して血管周囲に炎症物質(CGRPやサブスタンスP、キューロキニンAなどの神経ペプチド)が放出されます。これを神経原性炎症と呼びますが、さらにこの刺激が三叉神経を通って脳へ拍動性の痛みを伝えることで片頭痛の痛みを感じるとされています。
抗CGRP関連抗体薬は神経原性炎症で生じる痛みの原因物質であるCGRPを働かせないようにして痛みを防ぐ効果があります。現在、国内で使用可能はこの系統の薬は3種類ありすべてが注射薬です。CGRP自体に抗体が作用して働きを止めるものと、神経細胞にあるCGRP受容体に抗体が作用してCGRPの働きを止めるものとがあります。どちらがいいのかということはなく、その人にあっているのを使い続けていくことが必要です。長期的に使用することで片頭痛発作が治まってくる場合はその後も発作が起こりにくくなり、これらの抗体薬なしでも大丈夫となる人もいます。
いかがでしたか?
なぜ片頭痛が起こるのかという原因について説明いたしました。少しややこしくて分かりにくいかとも知れませんが、このような研究結果による原因をもとに、片頭痛のための薬が作られており実際に片頭痛発作やその予防に効くという理屈になっています。
徐々にですが頭痛に対する理解が深まり、少しでもスッキリとした日常を取り戻せたらいいなと思っています。