院長コラム

高血圧と頭痛

疾患説明

高血圧と頭痛の関係について

イライラしたり怒ったりした時に頭が痛くなることがあると思います。血圧が急に高くなることで痛みが生じているのですが、高血圧との関連もあることから今回はこの点を中心に説明していきます。

二次性頭痛の分類の中にも高血圧性頭痛という項目があり、この頭痛の時の血圧の数値としては上(収縮期血圧)が180mmHg以上、下(拡張期血圧)が120mmHg以上が目安です。この数値を血圧が超えたからと言っても頭痛がいつも起こるわけではないのですが、普段の血圧が正常範囲の人に何らかの原因で血圧が急上昇すると頭痛が起こることになります。血圧を普通の程度にまで下げれば頭痛は治まることが多いものの、血圧が上がることで脳の血管や心臓自体に負担がかかるうえ、他の内臓にも負担がかかって身体に異常や変調をきたしてくる可能性があります。そのためになぜ血圧が上がったのかの原因を究明する必要があります。

臨床における高血圧に関係した頭痛の分類としては高血圧性頭痛としての区切りがあります。さらに、この原因による分類には褐色細胞腫によるものと高血圧性脳症のあるなしでの区別があります。褐色細胞腫というのは珍しい病気なのですが、カテコールアミンという物質を作り出す腫瘍なので血圧が上がるだけではなく自律神経症状(交感神経系)の症状が強く出てくる病気です。高血圧性脳症とは血圧が高い状態で続いていることが脳神経への影響を及ぼしてしまい神経細胞の働きを悪くします。そのために錯乱状態になったり、意識がもうろうとしてきたり、目が見えづらくなったりなどの症状が出てくるものです。このような状態になると生命の危険があり、家庭にて様子を見ていられるものでもないので病院へ連れて行くことになります。
一般的には高血圧性脳症のない場合での高血圧による頭痛を経験することになるので、普段の血圧に注意しながら頭痛がひどくなった時にはこわい頭痛ではないことを確認しつつも血圧に注意する必要があると考えます。

こわい頭痛

ホメオスタシス障害について

高血圧性頭痛は、二次性頭痛の中でもホメオスタシス障害による頭痛という分類の中に入っています。ホメオスタシスとは「恒常性」というもので、身体の中での変化や身体の周りの環境の変化によって影響を受けても身体の状態を一定に保つための性質です。血圧をある一定の範囲に身体が自動的に調整するのもこの機能のためで、高血圧性頭痛もこのホメオスタシス障害による頭痛の仲間になっています。他には気圧の変化による頭痛や絶食による頭痛も含まれます。

クリニックに来て血圧を測ると普段よりも血圧の数値が高く出てしまう人がいます。白衣高血圧と言ったりもしますが、クリニックに来ること自体が心配事や緊張、プレッシャー、ストレスなどとなり血圧は高くなります。今ではこれを加味して診察室での血圧が130/80mmHg以上であると高血圧と考えています。その際には日ごろの血圧変化に注意を促した上でこの状態が続くようであれば薬による治療を検討します。しかし、このような人でも普段の生活での血圧が正常な範囲であれば経過観察とする場合もあることから、普段の血圧を記録していただくことが大切です。なお、自宅での正常な血圧の範囲目標としては成人では125/75mmHg未満とされており、75歳以上の高齢者になると135/85mmHgに設定されています(年齢だけではなくて病気を持っている場合でも目標となる血圧が違います)。これよりも高くなると頭痛の心配というよりも心臓病や脳卒中などの成人病の危険性が高くなり命に係わることがわかっているので血圧を目標となる数値よりも下げておくことを勧めます。軽度および中等度の高血圧が慢性的に続いている場合は、血圧の数値が高くなっていることに慣れてしまっている状態なので頭痛の原因にはなりづらいです。要は急激な血圧の変化が痛みの原因となるのです。
では、どのように血圧を下げるのかというと、生活習慣病の一つであることから身体の状態がどうであるかで治療の方針が決めていきます。薬での治療を検討しつつ、生活習慣の改善を図ってみることが必要であり、例えば肥満があったり塩分の取り過ぎがあったりすると食事の内容や食事量、調味料を使い過ぎないといった配慮も必要となってきますし、脂質異常症があって動脈硬化が心配されるようであれば血管を広げるような薬の治療に加えて、脂っこいものを控えるとか食物繊維を多く含む食品を選んで食べるなどです。昔と比べるといい薬がいろいろと登場していることからしっかりと治療を受けることができるため、診察室にてよく相談するといいでしょう。

いかがでしたでしょうか?
日ごろから血圧については触れることも多く、特に高血圧は生活習慣病の一つなので関心のある所だと思います。ただし、日常から高血圧で治療を受けている人が頭痛になりやすいのではなくて、急な変化が原因で突然血圧が上がることが頭痛の原因というものを紹介いたしました。この中にはこわい頭痛が隠れていることもありますので、原因を調べることが大切になります。気を付けていただきたいと思います。