妊娠・授乳中の頭痛
妊娠・授乳中の片頭痛について
妊娠すると出産までの間にいろいろと体調の変化が起こります。妊娠初期にはつわりが起きて辛い思いをしたり、安定してくると食欲が増してきたりと日常生活がだんだんと変わってきますが、妊娠中の女性ホルモンの変化によります。もちろん、これは片頭痛の発作にも関係してくるので多くの人では妊娠期間中には片頭痛発作がだんだん減ってきます。統計上では約6割の方が妊娠の初期から後期にかけて片頭痛の発作が減少しているようです。どちらかというと前兆のない片頭痛の人のほうが頭痛の発作が減りやすいようです。出産後も発作の頻度が減ったままの人もいれば、1か月くらい経つと妊娠する前のように発作の頻度が戻ってしまう人もいておよそ半々の確率といわれてます。
妊娠中の頭痛に対する治療
妊娠中は胎児への影響を考えて生活することになるので、口にするものは食事を含めて気を付けるようになり特に薬の内服には慎重になると思います。薬をできるだけ飲まないようにすることが多いものの一切飲んではいけないものではない上、妊娠週数によって安全に内服できる薬も違ってくるのでこれを意識しながら服用してみましょう。
胎児への薬の影響については最終月経初日から27日目までは無影響期であることから、この間の服用は問題ないとされます。妊娠検査で陽性になるのも3週目からなので、ここまではあまり気にせずに妊娠が判明してからの注意が必要です。この後すぐの妊娠4~12週は胎児の器官形成期に入ることから生まれてくる子供に奇形を生じないかが心配な時期なので、薬をはじめ飲酒や喫煙などの生活習慣を含めた注意が必要です。また妊娠13週以降は胎児の奇形発生の危険性は低くなるものの、胎児自体への影響が出る可能性があるので、これらの時期に片頭痛の発作が出た場合には胎児への影響がないとされている薬から飲んでいくことになります。なかでもアセトアミノフェンは安全な薬とされていますので、痛みが起こるとこの薬の内服による対処が中心になります。
しかし、薬の飲み過ぎはいつでもあまりよくありません。アセトアミノフェンも飲み続けていると胎児への神経発達に影響が出るとされますし、妊娠20週以降ではバファリンやNSAIDsは胎児への影響があります。スマトリプタンは大丈夫とされていますが、内服することでいろいろ心配になる人もいるので片頭痛発作が余程ひどい時に限って飲んでいただくことになります。
片頭痛の治療の中で、特に予防療法を受けている場合にはバルプロ酸を内服していることがあります。この薬には胎児に奇形が発生してしまう可能性が言われており注意が必要です。予防療法で使用されている薬の量は比較的少ない量ではあるのですが、危険性を考慮して内服の中止や他の薬への変更を検討しましょう。妊娠が分かった時点で担当医と早めに相談してください。また、奇形を予防するためにはバルプロ酸とともに葉酸の摂取が重要になりますので、追加で内服することが安心です。
片頭痛発作の予防薬を変更する場合には、通常少量のアミトリプチリンかプロプラノロールに切り替えていきます。繰り返しになりますが、片頭痛の発作時にはスマトリプタンなどのトリプタン系の薬を内服することで対応します。一般的にはこれらの部供養による胎児への奇形の発生などには影響はないとされていますが、頭痛のひどいときに限って薬を飲むのが安心です。さらには、妊娠中はロキソニンなど通常の鎮痛薬(NSAIDs)の服用は控え、アセトアミノフェンへ切り替えてもらいます。
妊娠期に注意が必要な片頭痛予防薬は次の通りです。
・ACE-I,ARB:胎児腎障害などで妊娠中期以降禁忌
・バルプロ酸:胎児形態異常(二分脊椎症)
・トピラマート:胎児形態異常(口唇口蓋裂)
・パロキセチン:胎児形態異常(先天的心疾患)
授乳期の片頭痛の治療
出産後は休むことなく子育てがスタートしますが、出産直後に片頭痛の発作で悩む人は少ないです。早いと出産後1ヶ月くらい経ってから片頭痛の発作が起こり始める人がいるのですが、基本的には妊娠前の片頭痛の発作時に飲んでいた薬を授乳期で服用することは可能です。しかし、母乳栄養を心がけていていると授乳しいることで内服している薬の成分がそのまま赤ちゃんへ行ってしまわないかと不安になると思います。薬の種類によっては赤ちゃんへ行ってしまう場合もありますが、極わずかであれば影響のないものも多いことから、薬を選んで内服していれば安心です。片頭痛発作の治療薬の中ではスマトリプタンとエレトリプタンが安全と考えらえていますが、薬の添付文書にはスマトリプタンの場合は12時間、他のトリプタン系の薬では24時間は内服した後で授乳を避けるように記載されてはいます。一応、次の薬は授乳による影響が少ないとされますので、片頭痛がひどく起こるときには始めに飲んでみるといいでしょう。
授乳期の急性期治療薬:イブプロフェン、ジクロフェナク、エレトリプタンは母乳への移行が少ないとされています。
では、授乳中の内服で注意が必要な薬はどれかというと、アスピリンとオピオイド系です。また、今は使用頻度が少ないですがエルゴタミンには乳汁分泌低下作用があるので避けた方がいいとされます。
片頭痛の発作予防療法としては妊娠中と同様でプロプラノロールやアミトリプチリンを中心に行います。この時期に避けた方がいいものとしては国内では認められていませんが抗てんかん薬のラモトリギンやゾニサミドおよびアテノロール、チザニジン、抗不安薬(ジアゼパム、アルプラゾラム)とされていますので注意してください。
ご存じかもしれませんが、他の薬のことなども「妊娠と薬情報センター」に詳しく紹介されておりますので、参考にしてください。
いかがでしたでしょうか?
生まれてくる子供のことを考えるといろいろと楽しみもある一方で不安もある日々だと思います。まずは、お母さんの体調管理が大切なので頭痛とも戦いに少しでもお役に立てれば幸いです。