院長コラム

月経と頭痛

疾患説明

月経と頭痛との関係

女性の約半数は生理に合わせて頭痛を経験しているとも言われています。ところが、生理時には月経困難症もあってか片頭痛の発作が起こっているのに気がついていない人もいるようです。月経困難症があると生理痛がひどくて頭痛があっても月経に伴う一連の痛みと考えてしまい、いつも通りと考えて市販薬を内服することで済ませているのではないでしょうか。月経時片頭痛という分類がありますが、要は月経にあわせて片頭痛発作が起こる方で(診断基準は省きます)。男性にはない定期的な女性ホルモンの変化影響していることが片頭痛発作との関連を指摘されています。

典型的なパターンとしても初潮前後に片頭痛を発症し、月経に伴って片頭痛発作が出るようになる。その後、妊娠にて発作はいったん軽減するものの出産後に再発。さらには閉経後には発作が治まってくるということからも、女性ホルモンであるエストロゲンとの関連が強く考えられています。

統計的には片頭痛を持っている人の男女比は約4対1で女性がとても多くて、特に20~40才代にピークがあります。また、若い女性の片頭痛の6割が月経と関係していると言われ、月経開始の2日前から月経3日目までに片頭痛発作を起こす人(月経時片頭痛)が多く、その中の8割の方は前兆のない片頭痛です。

月経前になると女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンが低下することと片頭痛との関連がわかってきています。エストロゲンの低下することにより血管が拡張することやプロゲステロンの低下により片頭痛に関係している三叉神経が敏感になることなどが片頭痛発作に関係しています。また、月経期には子宮内膜より放出される炎症性物質が全身に作用することも片頭痛の引き金になっているとされます。これらが原因で月経時の片頭痛は他の時期と違って痛みが強くて長く続き薬も効きづらいと考えられているのです。

 

月経時頭痛の治療

治療方針として、まずは鎮痛薬(NSAIDなど)を飲みつつ片頭痛発作が起きた時にはトリプタン系の急性期治療薬を飲むことで頭痛を切り抜けることが基本になります。時には鎮痛薬や片頭痛の薬を長時間の効き目がある薬へ変更してみることもあります。しかし、その都度の内服薬で効果が不十分であったり、内服の回数が多かったりするようであれば予防療法を検討します。

頭痛の治療に主眼を置くと、月経周期が安定している人の場合には発作が始まる予測がつきやすいこともあり、この時期にタイミングを合わせてのみ片頭痛の発作予防薬を内服すること(短期の予防療法)もありますが、多くの方は片頭痛の発作予防薬を飲みつつも片頭痛の発作のときには急性期治療薬も内服して過ごしています。片頭痛発作の予防療法自体は通常の片頭痛予防薬を使用して行います。痛み止めの飲みすぎにも注意が必要です。

月経時片頭痛の問題点

月経時片頭痛は月経困難症や月経前症候群の症状の一つであると考えた場合には月経時におこる症状の基になることへの治療を行うことで頭痛を和らげるという治療方針もあります。子宮内膜症などの治療で使われる経口避妊薬や低用量ピルを内服することで月経時の頭痛を和らげる一方で、前兆がある片頭痛を持っている人には注意が必要で、それは統計学的に脳梗塞を発症するリスクが高くなるためにピルなどの使用する場合には特別な配慮を必要としています。また、片頭痛の発作がある人がタバコを吸う場合には脳梗塞の危険性が高くなるので、さらに経口避妊薬も飲んでいると脳梗塞の危険性が増すので気をつけてください。

ちなみに月経困難症には月経の間に生じる病的な症状で下腹部痛や腰痛、悪心、頭痛、疲労感、いらいら感などがあります。ひどい場合の治療としては経口避妊薬や低用量ピルの内服が使用されています。月経前症候群は月経前の3-10日間続く症状で情緒不安定やいらいら感、集中力の低下、のぼせ、倦怠感、頭痛などの症状が出現するものです。この治療にも低用量ピルが使われたりしますが、詳しくは婦人科の先生に相談してください。

対策として

月経時のみだけではなく、日常生活での頭痛対策としては頭痛が起こった時の記録を付けることがとても手助けになります。外来に通院されている方には頭痛ダイアリーの記録を勧めておりますが、これが手元にない場合は日記帳や予定表、カレンダー、スマホのメモなどを活用して頭痛の始まった時間帯強さ影響度(寝込むくらいひどかったかどうかなど)、薬が効いたかどうかを記録しておくととても参考にもなります。